かつて、医療ケアを必要とする高齢者は、介護を要する場合でも、患者として病院に入院していました。こうした高齢者は、病状が改善しても、介護できる家族がいなければ退院できず、入院が長期間に及んでいたのです。このように長期入院を余儀なくされる高齢者の存在が問題となり、医療法を改正して長期入院患者をケアする療養型病床群が創設されました。さらに、介護保険制度が開始すると、介護療養型医療施設も新設され、従来の療養型病床群は、医療ケアの必要性に応じて医療療養病床と介護療養病床の2つに分けられました。しかし、医療ケアの必要性の高さを判断することは困難で、二者の区別は容易ではありません。その結果、介護療養病床は廃止され、介護療養型医療施設も介護医療院に代わることになりました。
ただし、介護療養型医療施設の全てがいきなり全廃される訳ではなく、6年間の猶予期間が設けられています。病院や診療所という位置付けの介護療養型医療施設に対して、介護医療院は初めから長期間の療養を前提としており、入居者の最期を看取るところまでケアすることが想定されています。病院などの医療機関では、長期入院の患者をいかに早く退院させるかが課題であり、国策としても医療費削減のため短期入院を促進していると言えるでしょう。在宅ケアや訪問看護が重視されるようになったのも、こうした背景があるからです。もっとも、増えつつある独り暮らしの高齢者に早期退院を求めても、家族の支援を得られないことから、かえって公的医療支援の負担が大きくなりかねません。そこで、ターミナルケアまで行う介護医療院が誕生したのです。